箱の中には、見たことの無い、不思議なモノが入っていた。
黒くて丸い、木の枝を曲げたような二つの円の中に、ガラスみたいな、でもやっぱり黒っぽいのがはまっている。
「えー、知らないの?これ、『サングラス』って言うんだよ。こうやって耳にかけるの。そしたらクロの苦手な太陽を見ても、目が痛くなんないんだよ」
見たことも無いものを目にして固まっている俺から『サングラス』とやらを取り上げると、実際にかけて見せてくれる。
ほら、掛けて見てよ、と言うアイルに半ば強引に、耳にサングラスを掛けられた。
この黒っぽいガラスは、レンズと言うものらしい。
魔界には無い技術だ。
掛け心地は、まだ慣れないからか、あまり良いものではなかった。
レンズ越しに見た景色は、視界に入るすべてのものが黒っぽく染まってしまう以外、慣れてしまえばどうってこと無かった。
窓からサングラスを掛けたまま空を見る。
なるほど。いつもは眩しくて仕方が無かった太陽が、全然眩しくない。
「昼間に出歩くときに最適だな。…ありがとう」
そう言って太陽から目を離し、視線をアイルに戻すと、彼女は目をまん丸にしている。
「…どうした?」
「クロが…」
「え?」
俺が何だ?そんなに驚くようなことしたか?
「クロが、『ありがとう』って言った…」


