「何それはノロケなの？」


　菜穂の開口一番のセリフはそれだった。

　勿論いつものクールな口調と一瞥をトッピングした上で。

　私は速攻でその言葉を否定して目の前の机をぶっ叩く。


　その轟音で教室の外で大合唱している蝉の鳴き声が一瞬だけかき消える。
　だけどそれも一瞬。

　再び聞こえてくる騒音に私の苛立ちは更にヒートアップした。


　「どう聞いたらノロケになるのよ！」

　「いきなりクラスメイトが同棲相手になって一夜明けて起きてみたら同床だったんでしょ？しかも相手は全裸。そして性交渉を求められたら――」

　「ちーがーうー！！」


　そう私が吠えると向かいに座る菜穂が『どこが？』と怪訝そうな目つきになった。