学校なら家に帰れば追撃は回避出来た。
 だけど逃げ場が主戦場になってしまうとなると私の安息の地は無くなる。


 四六時中、希彦に言い寄られ貞操の危機に晒されると考えると本気で心休まらない。

 ミチルが言うように考える暇なんて取れやしない。


 これからじっくり考えようと思った矢先にそのプランを潰されてどうしたらいいものか。


 力が入らなくなってヘロヘロと壁に寄り掛かっているとダイニングテーブルに付いていた希彦が隣にやってきた。

 そして力なく握っていた受話器を取ると大変にこやかな笑みを浮かべる。


 ああ、そんな好青年スマイル反則だ。

 綺麗な切れ長の目元が少しだけ下がり、いつもの力強い目元が柔らかくなる。

 …これはこれでカッコいいけど。