「最近の夫婦は帰ってきたら抱擁と口付けで出迎えるそうじゃないか。楓、よく帰って――うぉふうぅぅっ!!!」



 何故かうちの玄関先にいた希彦は両腕を広げて私を出迎えた。

 勿論、希彦の言うような出迎えをされる謂われは無いのでヤツの鳩尾に問答無用で正拳突きを叩き込む。
 呻き声と共に崩れ落ちる希彦に目もくれず私は慌てて家へと上がった。

 脱いだ靴を揃えるような暇なんてない。

 とりあえずこの馬鹿を家に上げたであろう人物に事情を聞かないと!


 廊下を抜けてリビング兼キッチンに向かう。

 ドスドスと怒りに任せて歩き、その勢いのままドアを開いた。