「夏美!」

「ん?」

「頑張れ!!」

「千波……?」

「アッチもアンタを待ってるかもよ?」

「へ?」

「いや、なんでもない。ほら!行ってこい!!」

「私……」



私は――


「勇気が……ないの。今まで誰にも言わなかったのもね、口に出しちゃうことで、気持ちをハッキリさせちゃうのが恐かったんだよね……」

「でもアンタは私に言った。それでも押さえ切れなかったからでしょ?」

「そうなの……かな?」

「どうなのかね」


やっぱり千波は意地悪だ。



本当は決まっていたはずの心だ。


人の気持ちなんて簡単にわからない。

いつも不安定なまま。



……だから恐くて

だからこそ生まれる想い。




それでも、確実に変わらない事実もあるのだ。



私は恋をしていて

私は木村を見て笑う。



気付けば木村がいて

振り返ってみればずっと木村が好き。



もう、十分だ――



「――うん!私頑張る!」


そうだ――


どうするかなんて、多分、千波に打ち明けた時から本当は決まってた。



私が欲しかった言葉。


“頑張れ”

その、たった一言。



誰かに背中を押してもらいたかった。


ただそれだけ――