傘があることに気がついたあたしは、思いっきり自分の頭をたたいた。

でも、何も起こることはなく周りは何も変わっていない。

「あったりまえじゃん…。」

あたしは、馬鹿だ…。

あれ??

なんだか、雨がやんだみたい…。

空を見上げる…。

って、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ??

なんで、ここにいるの??

嘘??

ってか、誰??

え??

訳が分かんない。

あぁ!!!

これは、夢なんだ!!!

きっと、夢なんだ!!!

あたしは、自分の頭をぽかぽか叩く。

そして、そっと目を開けた。

そこには、さっきの男の子がいた。

「へ??なんで??夢じゃないの??」

『へ…お前何寝ぼけたこと言ってんだよ、俺だよ。』

誰か思い出せないあたしに、あなたはこう言った。

『俺思い出せない??俺は、大岩 侑希。入学式であったと思うんだけどなぁ…。』

そう言って馬鹿にするようにあたしの頭をくしゃっとなぜた。

優しくて、あったかい手だった。

ふいにいい香りがした。

あたしの好きな甘い香り…。

お・・・思い出した!!!

「大岩先輩??ですか??」

あたしは、思い出してとっさに言った。

きっと今、あたしは変な顔してる…。

『おぉ~思い出してくれた??夏那ちゃん♪』

先輩は、優しくいたずらな笑顔で言った。

「は…はい…。」

あたしは、この人が好きだった。

片思いだった。

苦しいあのころがいっきに戻ってきた。

「あの…なにか…用ですか??」

『なんか…寒そうだったから…。』

え??

何で??

「あ…あの…ありがとうございます…。」

気持ちを素直に伝えると、また歩きだした。


「いまさら…ずるいよ…先輩…。」

いつの間にかあたしの目は涙でいっぱいだった。

雨だから、気にならない…。

後ろから、声が聞こえた気がした。

『雨の日は、また来いよ!!!』

また、あの気持ちがよみがえる。

先輩…。

もう一度信じていいですか??この気持ち…。

あなたを、思うこの気持ち。

先輩…好き…。