「おう、いいよ。ちなみに倍率を変えるには…」


勢いに押された渡はふっと笑い、天体望遠鏡の扱い方を高遠に教えてやった。


そして見せてくれた。
月のクレーター。
土星の輪。




ひとつひとつが、手に取るようにくっきりと見える。





ふと、高遠は接眼レンズがら瞳を離し、夜空を見上げた。


頭上には、無数の春の星座達。

天体望遠鏡がなくても、常に宇宙は見えていたんだ…



この中に絶対、自分の探している星があるんだ。




「学校の周りは、高いビルもないし、すぐ裏が林になってるから、この辺じゃあ一番星がきれいなんだよ」


渡が言う。


「ちょうど、この中庭は校庭に向かって吹きぬけてるしな。パッと顔を上げたらプラネタリウムだ」