「その人が教えてくれたんだ。人は死んだら星に、そして還ってくる時は流れ星になるって」



だんだん、車の通りが減って、風が強くなってきた。

その時、全くんはかすかに身震いした。

私は、全くんが着せてくれた紺のカーディガンを脱ぎ、彼の肩にかけた。


「汗かいた体、冷やすのよくないよ。風邪ひいちゃう」


「…さんきゅ。でも、ツバサは寒くないのか?」


「守ってもらった体、大切にしなきゃダメじゃん」


私は優しく言った。




全くんは、6歳で失った初恋の相手を、未だに忘れてはいない。

その証拠に、彼はまだその人を探している。

星になったんだと信じて…

この無数の星達の中から。




私達は、自転車をおしてゆっくり歩いて帰った。

全くんが疲れた様子だったからだ。




来るときは、一緒に流れ星になれそうなくらい近かった距離が、

夜風にさらされて尚遠ざかっていくように思えた。