高遠に身寄りがないこともあってか、
俺は来月から、特別支援学校で試験的に採用されることが決まった。
高遠と一緒に、新しい生活が始まる。
高遠の体調は良好で、
意識の戻らない日々があったとは、とても想像できない程の回復を見せた。
心配されていた認知症や精神障害は、脳の委縮自体は薬で抑えられるということで、軽度のもので済んだ。
無菌室に居る必要もなくなり、高遠は再び元の病室に戻ってきた。
看護師が俺に呟く。
「最近、あの女の子来ないんですね。せっかく全くん、こんなに元気になったのに」
「あぁ…大丈夫です。彼女は、遠くからでもちゃんと、こいつのこと見守ってますから」
「あの子が最後に会いに来てくれた夜からなんですよね、全くんが回復を見せ始めたの。
なんだか私、あの子の命そのものが、全くんに宿ったような気がしてならなくて…」
――…命が?
「ごめんなさい。変なこと言って。なんか、そんな風に思えちゃって。全くんの事を命がけで想っている感じがしたから。全くん幸せ者ですよね」
と言って立ち上がると、
「そうそう、ニュースでもロマンチックなことやってましたよ。新しい星雲が発見されたんですって」

