「…全くん」

勇気を出して、名前を呼ぶ。

プラスチックのマスクをした全くんは、細く細く開いていた瞳を、ゆっくりと私へ向けた。



瞳以外は動かない。
声も発しない。


それでも私は、こみ上げてくる何かを抑えきることができなかった。



全くんが生きてる。


生きてる。



…良かった…。



先生は入口に立ったまま、私たちの方へ近づいては来なかった。


看護師さんが呼びに来るまで、私と全くんは一度も視線をずらすことなく見つめあった。



何か、伝えたいことでもあるの?

私のこと、わかるの?

心の中を全部読みとってあげたかった。


このカーテンが無くなれば、少しはわかったかもしれない。