私を抱きしめる先生の体は、酷く震えていた。
記憶を取り戻しかけた病院で、パニックを起こす私をなだめるために抱きしめた時とは、明らかに違う。
感情をむき出しにしない先生が今…震えながら、自分の感情で私を抱きしめている。
――先生、私ね
以前ここに来た時に感じた、先生への感情が、本当は少し怖かったの。
あったかくて安心できて、全くんに対する気持ちとはまた少し違う感情。
もしかしたらね、
先生への、この感情が、本当の恋なんじゃないかって…
全くんへの気持ちは、
実は恋じゃないんじゃないかって…
そう考えると怖かった。
怖かったんだ。
…でも、
もう怖くない。
私の心の中からも、何か大きな感情が膨れ上がり、それが言葉となって私の口からこぼれ落ちた。
「…ハル…兄」

