全くんのお母さんが、私たちのお母さんを殺した事実。

そして10年経った今、自首したこと…

それだけ伝えると、先生は再び帰って行った。



「無茶だけはするな。君が傷つけば、悲しむのは目が覚めた時の高遠だ」



何度もそう言って、私の頭を撫でてくれた。



でもね、

私が頑張らなきゃ、目が覚めた時の全くんには二度と会えないような気がするの。

全くんがこのまま目を覚まさなかったら、
私が頑張らなかったせいだって思うような気がするの。



自分の子供のために必死だった、全くんのお母さんの気持ち…

悔しいけど、今なら痛いくらいわかる。



なんであの人は、今頃になって罪を打ち明けたんだろうね?

それは本人にしかきっとわからない。


でも、一つ気づいてた。


病院のお医者さんに、
全くんのお母さんは言ってたんだよね。

あれだけ嫌っていた私を、全くんの身内代わりだと思ってくれって。


焼き払うくらい嫌っていたHIV感染者とその家族を、ようやく認めてくれたんだよね。