体中が凍りつく。

「え…、嘘」


「高遠の母親が、自首したそうだ。君に伝えようと思って、急いで引き返してきたんだ」


「だって、もう10年も経ってるのに…」



その時耳の奥で、全くんや彼のお母さんの声がリピートしていた。


『彼女がHIV感染者だったから、母親は彼女を嫌っていたんだ――』

『私が殺してやるわよ』…


「当時の日本でさえ、人が住んでいる建物への放火は時効が15年だったけど…海外でやって日本に逃げてきたわけだから、その間時効は進まないんだ」



それじゃ…

それじゃあ全くんはどうなるの?
全くんにこれからかかるお金を誰が用意するの?



「――まさか、変な事考えてるんじゃないだろうな」



先生の言葉は、もう私の耳には入らなかった。


全くんのお母さんが言ってた。

『そんなに全のこと想っているなら、あなたが体を売ればいい――』…



私が、覚悟を決めた瞬間だった。

今まで途切れなかった彼の足跡を、こんなところでは消させない。

生きて欲しい。
私と…お母さんの分も、全くんに。


お母さん、ごめんね。

私、好きな人のために体を売ります。