渇いた砂の上に、ポツポツと涙の粒が落ちる。


「全くん、ねぇ、なんで抱きしめてくれたの?なんでキスしてくれたの?どうしてなのか聞かせてくれないと、私、わかんないよ…」


波音に消されそうなかすれた声で、私は泣いた。


「ねぇ、教えてくれる前に忘れちゃうなんて嫌だよ…」




医者から説明を受けた後、無菌室に寝かされた全くんは目を覚まさなかった。

鼻に管を通され、口にはプラスチックのマスクをされ、腕には点滴を打たれて静かに眠っているのを、
私は窓越しに眺めていた。


こんなにたくさんの機械やビニールに囲まれたら…

もう天文学部の活動できないじゃない。


手の届きそうだった、目の前に広がる宇宙に、もう手が届かないよ。



…んーん、逆だ。


全くんが、星になっちゃうよ…




ポロポロとこぼれる涙は、砂が吸ってくれる。

かすれた泣き声は、波が吸い取ってくれる。

でも、この気持ちは誰も吸い取ってはくれないの…


その時、後ろの方ででサクッと砂を踏む足音が聞こえた。