その夜、

私は先生と海に来た。
真夏の真夜中の海。

潮の匂いと湿気が、体中にぺたぺた貼り付く。


全くんと、自転車二人乗りして来た海岸。


「少し、一人で居てもいいですか?」


先生を運転席に残したまま、私は一人で砂浜を歩いた。




頭の中が真っ白になってしまったのだ。






「エイズ脳症…?」


「HIV感染細胞が中枢神経系組織へ浸潤し、脳の神経細胞が冒されることです。おかしな言動が見られませんでしたか?」


医者は淡々と告げた。


全くんのお母さんは結局連絡がとれず、私達二人が彼の症状を聞いた。

全くんのお母さんが、お医者さんに言い残したんだそうだ。


『もし、私が駆けつけることができない時は…担任の渡先生と、一緒にいるツバサという女の子を、身内と判断していただいて結構ですので』
と…


近づくなって言っていたくせに

どうして??