「あの星、もうでかくならないみたいだな」


望遠鏡を覗きながら全くんが言うので、私はふと頭上を見上げて答えた。


「これからまた、小さく白くなっていくんだよ」


まだ肉眼でも見える赤い星。
再び見えなくなってしまうのかな。


…いや、わからない。

もしかしたら100億光年離れた場所にあって、ようやく最近ここに光が届いたのかもしれないし。

それなら、ずっと肉眼で見えるよね。


自分が地球からどれくらい離れた場所に居たのかすら、私は知らなかったのだ。



宇宙は広いから。





それから毎日、私達は深夜まで学校に残って夜空を見た。

全くんはカメラのシャッターを開けたまま星の動きを撮ったり、ノートに事細かにメモしたりと、一生懸命やっていた。


私は、そんな全くんをずっと見ていた。

こんな日常が毎日、ずっと続けばいいのにと思っていた。



でも、どんなに元気そうに見えても、免疫不全を起こしている全くんの体が元気な筈なかった。