「ごめんな…」


全くんの声は弱く震えている。


渡先生は、立ち止まったままの私の背中に向かって静かに話し出した。


「お金でも名誉でもないさ。高遠はね、あの星を他の誰にも見つけて欲しくないって言ってたんだよ」


私はそのまま、背中で先生の言葉を聞いていた。


「国内であれ海外であれ、もし研究者達に見つかったら大ごとになるだろう。だったら最初から、高遠、お前の物として発表すればいいじゃないかって先生は言ったんだ。それだけさ」


渡先生は、持っていた天体望遠鏡を設置すると


「天文学部の活動は許可するから、二人でよく見ておきなさい」


と優しく言い残し、去っていった。


気をきかせて、二人きりにしてくれたのだろうか。




私は全くんに訊く。


「天文学部…許可出たんだね、良かったね」


全くんは軽く笑うと、先生が去っていった方を見つめて呟いた。


「二人で…か。センセーの奴、部員は俺一人だって言ってたくせに…」