いつもは温厚(たぶん)な桜にも怒りの波が訪れはじめていた。
その怒りの矛先は、この前のプリンがどうの、せんべいがどうの言っている兄弟に向けら
れた。
「いつまでケンカしてるんですか!?何度もいいますが、ココにはアレ出る言ってるでしょう!?とっとと歩いてください!?」
怒鳴られた兄弟は唖然とする。
この少女が声をあらげているところを初めて目にしたからだ。
まぁ、たった半日ほど話をしたにすぎないのだけれど。
「だからぁ、アレってなぁに?」
場を和ますようなとぼけた口調。
それが弟である響と倭を見分ける二つ目の特徴だ。
「だからアレですよ!?知らないんですか!?ココでアレといったらアレしかないでしょう!?」
「俺たちはこっちの世界の住人じゃねぇんだよ。忘れたのか?」
そう倭につき返され桜がはっと息を呑む。どうやら本当に忘れていたららしい。
「えっとですねぇ・・・アレっていうのは・・・一応山賊のことなんです・・・」
いきなり弱気に戻った。
コロコロ変わるなぁ・・・。
それが兄弟の感想である。
変なところで気が合う。


