現実はやけに厳しい場所(トコロ)だ。夢のカケラもありゃしない。


今日も倭(やまと)は求人雑誌片手に混沌とした街の中を歩いている。


このご時世仕方のない話だ。夢見る前に現実を見なければ何も始まらない。


空を仰ぎ見れば今日も曇天。最悪な一日。


「さてと、明日はドコ受けるカナ・・・。まぁ、ドコ受けても落ちるんだろうけど」


独り言をつぶやきながら信号待ちしていると、反対側で待っている一人の少女に目が留まった。


特に目立つ容姿でもないのに、ただなんとなく・・・。


黒のストレートなロングヘアー。どこにでもありそうなセーラー服。


そんなことを考えていると周りの人々が動き出していた。


ふと見上げると信号が青に変わっていた。


「やべぇ。早く渡らねえと。ココの信号変わるの早いんだよな」


急ぎ足で渡ろうとして、ふと見渡すと先程の少女はいない。
 

「ん?おかしな。真正面にいたはずなのに・・・」

 
たぶん、急いで渡ったのだろう、と特に気にしなかった。
 

横断歩道を渡り終えて、時計を見るとちょうど九時半をさしたところだった。
 

「面接は十時だったな」
 

そして今日も、倭にとって退屈な一日が始まった。