枯れ草が地面を覆い、

ツタの葉の橋が頭上を渡り、

でも綺麗に掃除された形跡がある

軽くトンネル化した道だった。



途中からツタが密生し、

日光が十分に地面まで届かない。



その辺から地面は

枯れ草からジメジメとした苔に変わる。


転がる石は水分で濡れ、

ツタの茎から時折、滴が垂れてきた。



その道の先に微かな明かりが見えた。


「ランプ?」


豆電球の入ったランプが

独特な光を放っていて、


その先に木製のドアが見えた。



「ここ。」


先を行く君島さんがドアノブに触れた。



もう香ばしいパンのいい香が

強く匂ってきている。



私が頷くと、君島さんはゆっくり

ドアを押した。



「おはようございます。」


そこはカーテンで区切られた

小さな個室だった。


「靴脱いだら

手、消毒してね。」



手前にある可愛い白とピンクの

靴箱に履いてきたウエスタンブーツを

無理矢理突っ込むと、


君島さんに続いて消毒液を

手に擦り込ませた。



「沙織か?」

カーテンの奥から太い男の声がした。


「沙織だよ、店長。」


「なんだ珍しい。」


君島さんに店長と呼ばれた男の人が、

カーテンをめくった。



「おや?見ない顔だね。」


「大学で一緒の谷澤美桜さん。」


「はじめまして!」


店長は歳相応の白髪混じりの髪に

ワイルドな顔つきの

一昔前に流行った〝チョイ悪おやじ〟

だった。



「店長、お話が・・・お時間いいですか?」



君島さんは、待ってて、と言うと

店長とカーテンの向こうへ消えた。