俺は急ぎすぎて写真すら忘れていた。

「何があったのか知らないけど、先生の家族の事は深く聞いちゃダメだよ?」

「は…?なんでお前がそんなこと。」

「高橋先生はすごく良い先生なの。でも、奥さんのことだとか…家族の事についてはあんまり知られたくないみたい。塾で一回友達が詳しく聞こうとしたとき、先生なにも喋らなくなっちゃって。」

やっぱり何かあるのか?

青山が言ってた“勘違い”って

「なんなんだよ…」

「私も詳しくは分からないけど、お兄ちゃん?これ…」

「えっ…」

美穂がくれたのは、先生の入院している病院の住所の書かれたメモだった。

「これ、東京に行くついでにお見舞いに行くって言ってた友達に、住所聞いたの。」

「おまえ、わざわざ?」

「先生のお家によく来てたお姉さんの事…私も心配だから。」

美穂…気付いてたのかよ。

「私も心配だし。よろしく!電車来たよ!」

俺はあわてて電車に乗り込んだ。