乙羽が車に乗り込むと
桜木は上機嫌で車を走らせる
時々、不安げな表情を見せる
乙羽を気遣いながら
桜木は一生懸命、話題をふりまく
桜木クンの優しさは
いつも分かりやすくて
温かい...
「桜木クン...」
「ん?」
「ぁりがとね」
「...何が?」
「今までずっと...」
「は?何?
どうしたの?」
「桜木クンにはずっと
世話になってばかりで...
いつかちゃんと
お礼しなきゃ..って...」
「お礼???
何の事かさっぱりだよ」
桜木がとぼけてみせる
「本当に...
桜木クンには
感謝してる...」
「まぁ、別に感謝されるのは
悪い気しないけど
でも、オレのこと
買いかぶりすぎっしょ...
俺はそんな...
カッコイイ男じゃないよ」
俺は...
いつも本気だったよ
柊音にできないなら..
俺が...って...
ハンドルを握る桜木の手に
力がこもる
少し開けた窓からはイタズラな風が
乙羽の髪をもてあそぶ
それを静かに耳にかける乙羽
そのさりげない仕草一つ一つが
桜木の胸を締め付ける

