医師からの電話で
慌てて家を飛び出した飯岡は
朝の渋滞に引っかかり
車は中々前に進まない
「クソッ...」
焦りでハンドルに当たる飯岡
「...ぁの
精算の方はまだですか?」
「..ハイ
申し訳ありません
主治医の記入漏れが
ありまして...
大変、申し訳ありませんが
今、しばらくお待ち下さい」
「...分かりました」
乙羽は待合のイスに座り
名前が呼ばれるのを待つ
息を切らせ
病院の待合に駆け込む飯岡
待合に一人、座る
乙羽の姿を見つけると
隣に静かに腰を降ろした
「フゥ...」
「...飯岡さん!」
驚く乙羽
「もぅ...
済んだのか?」
「...まだ」
「そか、行くぞ...」
「ぇ、でも
まだ、お会計が...」
「会計なら...
もう、とっくに済んだ」
...ぇ?
「勤務中に
起こったんだ
労災だ...」
労災...?
「そんなことより
どこに行くつもりだ?」
「...事務所に」
「そか...
奇遇だな
俺もそこへ行く所だ」
そう言い飯岡はスタスタと歩き出す
乙羽は会計の人に頭を下げ
飯岡の後をついて行く
病院の入り口に
荒々しく止められた
飯岡の車
冷静な飯岡が
どれだけ急いで
ここに来たか分かる
飯岡は助手席のドアを開け
乙羽を乗せると自分もすぐに
運転席へと乗り込む
後部座席には
乙羽のバッグが
乗せられている
タレントの家で問題を
起こしたあたしは
当然、DOLLを解雇される
あんなにイヤだった
DOLLから解放されるのに
あたしの気持ちは
複雑で...
あたし...
どこへ帰るんだろう...
全てを捨てて
ココへ来た...
帰る場所なんて...
どこにもないのに...
「保険の手続きは済んだ」
飯岡が
タバコに火をつけながら話す
「近々、保険会社から
連絡が来るだろう
相手側との賠償問題も
腕のいい弁護士を
つけたからすぐに解決する
後...
これはお前に返す」
胸ポケットから
預かっていた乙羽の
通帳と印鑑を返す飯岡

