「飯岡さん...
生命保険って...
自殺でも降りる?」
乙羽の言葉に飯岡は
パイプイスを引っ張り出し
乙羽の側に座る
「兄は...
自分から...」
涙で言葉を
詰まらせる乙羽
「妹思いの...
立派な兄貴が
いたんだな」
「...そんなことない
兄は...バカだ...
............ぅぅぅ」
「書類上は特に
何の問題もない
世間一般的に見ても
お前の兄は事故で死んだ」
「...」
「今さら真実を
穿り返したところで
お前の兄貴は
生き返りはしない
だったらさっさと
借金にカタを付けて
お前は...
さっさと
元の世界に帰れ
そして兄貴の分も
幸せに生きるんだ
それが...
お前が兄貴に
してやれる
弔いだ...」
「......」
「言ってる意味...
分かるよな...
これは...
お前の兄貴が遺した
「最後の言葉」だ
中身がどんな内容だって
妹思いの素晴らしい
兄貴がいたという証だ...
だから...
たとえお前にとって
衝撃的な内容だったとしても
お前はこれを...
大切に持ってろ...
読み返す必要なんかない
お守り袋の中にでも何でも
縫いつけて...
お前はこれから
その兄の言葉と共に
生きて行くんだ....」
そう言い、飯岡は
小さくたたんだ兄のメモを
乙羽の手の中に握らせる
「...ゥゥッ」
こらえきれず
嗚咽をもらす乙羽
「...相手側との
賠償の話も進める」
「...賠償?
被害者は
向こうの方なのに」
乙羽がポツリ呟くと
「安心しろ
いくらぶん取っても
気がすまないクソ野郎だった」
「それでも
やっぱ...
心が痛いよ」
「ぁのな...」
どこまでも人のいい
乙羽に呆れる飯岡
「理由や原因はどうであれ
例え、お前の兄貴が
道の真ん中で寝てたって
それを轢いていいなんて
今の法では許されないんだよ
車に乗れば強者
歩行者は弱者だ
いくら目の前に突然
飛び出してきたとはいえ
法定速度をしっかり
守ってりゃぁ、ちゃんと
避けるか止まる事ができたんだ
だが、ヤツは法定速度を50kmも
上回ってた上、飲酒運転だった
お前の兄貴が死を
意識してようが
してまいが関係ない!!」
乙羽はうつむいたまま
何も言えなかった
そんな単純な
ことじゃない...
兄が...
そんな気を
起こさなければ
あの日...
事故は起きなかった
その人が
加害者になる事も...
「お前の兄貴のことだ
きっと、いろいろと
考えたんだろう...
自分が居なくなった後
お前が困らぬよう
借金帳消し+尚且つ
お前に少しでも遺るよう
+α(プラスアルファ)分も
欲しかったんだろう...
自分の意志で病気に
なることができないし
自殺じゃ、保険金はおりない
だから...
こんな方法を...」
そ..んな...
乙羽はベッドで
泣き崩れる
「本当に妹思いの立派な
兄貴だったんだ...
誰にでも
できることじゃない」
泣きじゃくる
乙羽の側に寄り添う飯岡
そして
乙羽が泣き疲れて眠ると
飯岡は書類を持って
静かに病室を出る

