DOLL・・・ ~秘密倶楽部~

翌朝...

まだ日も
上がりきらない内に
柊音から

「行ってきます」

のメールが入る


 こんな早く...


朝が苦手な柊音

一緒にいる時は
何度か起こさないと
起きれなかったのに...

何だか自立した息子を
想うような複雑な気分で
送ったメールは、まるで
心配性な母親のような
メールになってしまった

すると
すかさず柊音から

「母親かよ」

と鋭いツッコミが返ってくる


朝の内に何度か
こういう他愛のない
メールをやりとりし
柊音は撮影に挑む

そして食事時や休憩時に
TV電話で電話をしてくる

次のTV電話に備え
薄くリップを引き
髪をとかす乙羽を見て
看護師は


「イイなぁ~

 あたしもマメな
 彼氏が欲しい~」


と冷やかす


その日の夕方
これから雪山に囲まれた
僻地に撮影に行くと
電話が入る


「電波も入りにくい
 ところらしくてさ...

 しばらく電話もメールも
 つながんないかも...」


「ぅん、わかった」


「フーン...
 聞きわけイイんだな」


少し意地悪く
拗ねた口調の柊音


「...
 
 ヤダ!!電話して!!
 絶っ対!!電話して!!

 電波が届かないなら
 基地局を持って行ってでも
 あたしに電話して!!」


「...

 プッ! クククク...

 .........基地局って」


電話の向こうで
お腹を抱え笑う柊音


「何?」


「マジかよ...
 今のワガママ?
 
 乙羽、わがままヘタ過ぎ...

 ......クククク」


「もぉ//」


「ゴメン、ゴメン!
 
 ぁ~おもしろい
 久しぶりに笑った

 しゃ~ない
 しばらく淋しいけど
 今ので我慢するか...

 この撮影が終われば
 帰れるし...」


「ぅん
 気を付けてね...」


「ぁぁ」


何だか
スッキリした様子の柊音


 そっか...
 当分、つながんないのか...


しばらくの間、淋しそうに
切れた携帯を見つめる乙羽




夕食も終わり
消灯時間が近付くと
担当の看護師が乙羽の
点滴の残量をチェックし
部屋を出て行く

乙羽はいつものように
ベッドの上で膝を抱え
窓の外の月を眺める

どんどん高く上って
その姿を小さくする月

毎日、眠くなるまで
月を眺める乙羽


 そろそろ...
 満月かな...


そんなことを考えていると


コン、コン


小さく遠慮がちに
乙羽の部屋のドアがノックされる


 誰...?


不思議に思いながらも
乙羽が返事をすると
ドアはスーっと開き冷たい風が
病室に流れ込んでくる


コツコツ...と
低い靴音が
乙羽の元へと近付く

だが、柊音の靴音とは
少し違う


 シオ..ンじゃない...


警戒する乙羽の前で
靴音が止まると


「森ちゃん...」


聞き覚えのある声が
乙羽を呼ぶ


「...桜木クン?」


「...ぅん//

 ゴメン、寝てた?」


「ぅぅん」


「...入ってもいい?」


「ぅん」


ゆっくりとカーテンが開き
顔を覗かせる桜木


「ゴメン...
 こんな時間に...」


「ぅぅん、どうせ
 眠れそうになかったし...」


窓から射し込む
月明かりに照らされて
儚げに微笑む乙羽

その姿を見ただけで
桜木は乙羽を
抱きしめたい衝動に駆られる