.....
.......
気が付くと
あたしの目の前には再び
真っ白な空間が広がっている
何だったんだろう...
やっぱり、白い扉の方が正解で
振り出しに戻ったのかな...
そんな事を考えてながら
さっきの空間とは違うことに気が付く
音...?
さっきまで確か
何の音もない「無音」の場所に
いたはずなのに...
ピッ..ピッ..という機械音や
シューという空気が抜けるような音が
一定のリズムで聞こえてくる
そして次の瞬間
耳に入ってた水が抜けたみたいに
一気に音が鮮明になる
聞き覚えのある機械音
薬品の匂い...
朦朧とする意識の中で
あたしの意識はだんだんと
現実へ引き戻されていく
そして...
霞ががった霧が
すぅーっと
晴れ渡るように
ゆっくりと記憶が
蘇り始める
あたし...
そして...
自分の愚かさを思い知る
動ける範囲で周りを見渡すと
見覚えのある機器と独特な匂い
ここは...
病..院...
そっか...
あたし...
ようやくすべてを
把握したとたんに
あたしの目から静かに
大粒の涙がこぼれ落ちる
それはあたしが
「生」に執着している証でもあり
愚かな行為への懺悔でもある
自分でしたことだから
泣く資格なんてないのに...
「...ぅぅぅ」
まだ自分自身で感情も
コントロ-ルできなくて
ただ、ただ...
涙だけが溢れ出す
「気が...
付いたのか...」
不意に足下から聞こえた
低い声に驚く
「言っておくが...
ここは...
天国なんかじゃない
そぅ簡単に
死ねると思うな」
「い..いい..おか...さん?」
低い声そのものは聞き覚えのある
確かに飯岡の声だがその容姿は全く違う
見慣れぬ帽子にマスクとサングラスで
酷く腫れあがった顔を隠している
「何だ...
俺で悪かったな...」
そのいつもの飯岡節に
なぜかとても安心した
「ぅぅん...
飯岡さんでよかった」
「頭も打ったのか?」
「クスッ...」
笑うあたしを見て
たとえ表情が伺えなくても
ホッとしているのが分かる
飯岡はナースコールを押す
だって...
柊音には...
合わせる顔が..ない...
一番 会いたくて...
一番 会いたくない人...
「飯岡さんは大丈夫ですか?」
「何のことだ?」
「その...」
「...ったく
人の心配してる場合か?」
「...」
「大丈夫だ...
俺の傷は時間が経てば治る」
飯岡の押したナースコールで
医師と看護師が慌しく
部屋に入ってくる
「森園さん..よかった...
意識を取り戻して...
ご気分はいかがですか?」
「ハイ...
大丈夫です」
「どこか
痛むところは?」
医師の問いに首を横に振る
「自分が何で今...
ここにいるのか
理解できていますか?」
日々、命を扱う医者
かつてはあたしも同じように
ここにいたはずなのに...
取り返しのつかない過ちに
あたしはただ、ただそれを恥ずかしく思い
うつむいたままうなずいた
それを確認したように
飯岡が静かに廊下へと出て行く
「...非常に
危険な状況でしたよ」
医師の言葉にあたしは
涙が止まらない
「発見が早かったことに加えて
的確な応急処置とたくさんの人が
あなたを救おうと動いたお蔭で
あなたは今、こうして私と話ができるんですよ」
「...」
自分が犯した
「非人道的行為」に
見合う言い訳など
あるわけもなく
あたしは医師の言葉にウン、ウンと
頷き涙を流すことしかできなかった
そんなあたしの肩を
医師は優しくトントンとたたくと
「んじゃ、処置をお願いします」
そう看護師さんに伝えると
飯岡の姿を探し部屋を出て行った
そしていつものように
喫煙室で煙草を吸う飯岡を見つけると
「意識が戻ったので
もぅ大丈夫です
発見やその後の処置が
早かったので後遺症などの
心配もなさそうです」
「そうですか...
ありがとうございます」
「ただ...」
「?」
「自傷行為で一番やっかいなのは
常習性があるということです
一度、自分自身を傷付けてしまうと
その行為に対するハードルが極端に
下がるんです
一度、経験してるだけに
その行為に対しての恐怖心が
乏しくなるんです
それを何度か繰り返す内
取り返しのつかないことに...
という感じです」
「...」
「いい時はいいんですが
悪い時はすぐ、その行為に
逃げるという傾向があります
人の注意を引く為に...
ということもあります
傷の様子を看ながら
しばらくはカウンセリングも
必要なのかもしれません」
「...分かりました
宜しくお願いします」
飯岡は医師に対し深々と頭を下げる
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気が付くと
あたしの目の前には再び
真っ白な空間が広がっている
何だったんだろう...
やっぱり、白い扉の方が正解で
振り出しに戻ったのかな...
そんな事を考えてながら
さっきの空間とは違うことに気が付く
音...?
さっきまで確か
何の音もない「無音」の場所に
いたはずなのに...
ピッ..ピッ..という機械音や
シューという空気が抜けるような音が
一定のリズムで聞こえてくる
そして次の瞬間
耳に入ってた水が抜けたみたいに
一気に音が鮮明になる
聞き覚えのある機械音
薬品の匂い...
朦朧とする意識の中で
あたしの意識はだんだんと
現実へ引き戻されていく
そして...
霞ががった霧が
すぅーっと
晴れ渡るように
ゆっくりと記憶が
蘇り始める
あたし...
そして...
自分の愚かさを思い知る
動ける範囲で周りを見渡すと
見覚えのある機器と独特な匂い
ここは...
病..院...
そっか...
あたし...
ようやくすべてを
把握したとたんに
あたしの目から静かに
大粒の涙がこぼれ落ちる
それはあたしが
「生」に執着している証でもあり
愚かな行為への懺悔でもある
自分でしたことだから
泣く資格なんてないのに...
「...ぅぅぅ」
まだ自分自身で感情も
コントロ-ルできなくて
ただ、ただ...
涙だけが溢れ出す
「気が...
付いたのか...」
不意に足下から聞こえた
低い声に驚く
「言っておくが...
ここは...
天国なんかじゃない
そぅ簡単に
死ねると思うな」
「い..いい..おか...さん?」
低い声そのものは聞き覚えのある
確かに飯岡の声だがその容姿は全く違う
見慣れぬ帽子にマスクとサングラスで
酷く腫れあがった顔を隠している
「何だ...
俺で悪かったな...」
そのいつもの飯岡節に
なぜかとても安心した
「ぅぅん...
飯岡さんでよかった」
「頭も打ったのか?」
「クスッ...」
笑うあたしを見て
たとえ表情が伺えなくても
ホッとしているのが分かる
飯岡はナースコールを押す
だって...
柊音には...
合わせる顔が..ない...
一番 会いたくて...
一番 会いたくない人...
「飯岡さんは大丈夫ですか?」
「何のことだ?」
「その...」
「...ったく
人の心配してる場合か?」
「...」
「大丈夫だ...
俺の傷は時間が経てば治る」
飯岡の押したナースコールで
医師と看護師が慌しく
部屋に入ってくる
「森園さん..よかった...
意識を取り戻して...
ご気分はいかがですか?」
「ハイ...
大丈夫です」
「どこか
痛むところは?」
医師の問いに首を横に振る
「自分が何で今...
ここにいるのか
理解できていますか?」
日々、命を扱う医者
かつてはあたしも同じように
ここにいたはずなのに...
取り返しのつかない過ちに
あたしはただ、ただそれを恥ずかしく思い
うつむいたままうなずいた
それを確認したように
飯岡が静かに廊下へと出て行く
「...非常に
危険な状況でしたよ」
医師の言葉にあたしは
涙が止まらない
「発見が早かったことに加えて
的確な応急処置とたくさんの人が
あなたを救おうと動いたお蔭で
あなたは今、こうして私と話ができるんですよ」
「...」
自分が犯した
「非人道的行為」に
見合う言い訳など
あるわけもなく
あたしは医師の言葉にウン、ウンと
頷き涙を流すことしかできなかった
そんなあたしの肩を
医師は優しくトントンとたたくと
「んじゃ、処置をお願いします」
そう看護師さんに伝えると
飯岡の姿を探し部屋を出て行った
そしていつものように
喫煙室で煙草を吸う飯岡を見つけると
「意識が戻ったので
もぅ大丈夫です
発見やその後の処置が
早かったので後遺症などの
心配もなさそうです」
「そうですか...
ありがとうございます」
「ただ...」
「?」
「自傷行為で一番やっかいなのは
常習性があるということです
一度、自分自身を傷付けてしまうと
その行為に対するハードルが極端に
下がるんです
一度、経験してるだけに
その行為に対しての恐怖心が
乏しくなるんです
それを何度か繰り返す内
取り返しのつかないことに...
という感じです」
「...」
「いい時はいいんですが
悪い時はすぐ、その行為に
逃げるという傾向があります
人の注意を引く為に...
ということもあります
傷の様子を看ながら
しばらくはカウンセリングも
必要なのかもしれません」
「...分かりました
宜しくお願いします」
飯岡は医師に対し深々と頭を下げる

