エレベーターはすぐに
表示した階につき
扉が開く
重たい足取りで
柊音の部屋へ向かう乙羽
震える指先でインターホンに
触れるか触れないかの瞬間
ガチャ...
うつむき加減で
扉を開ける柊音
.....シオン
扉を開けると柊音は
目も合わさずに
部屋の中へ入っていく
.....
乙羽は柊音を追うように
部屋に入りゾッとする
玄関口のすぐ横のキッチンは
異様なほど散らかり
生臭い匂いがしている
柊音を追い
リビングへ行き思わず
息を呑む乙羽
.......
リビングには
柊音の怒りが
いろんな形で
現されていた
真昼間だというのに
部屋はカーテンで固く閉ざされ
薄暗い部屋の中では
TVだけが唯一の
光源となって
煌々と妖しく光っている
床や辺りに散乱している
さまざまな物は
行き場のない
柊音の怒り...
「...ぁのね、柊音」
乙羽が恐る恐る柊音に
話しかけると柊音は
今までに見たことない
怖い目つきで乙羽を睨む
.....
思わず言葉を
失ってしまう乙羽
テキーラのボトルを片手に
ベッドの足元へ座り込み
浴びるように酒を飲む柊音
何を忘れたいのか...
何から逃れたいのか...
そんな強いお酒...
乙羽の目に涙が溢れる
乙羽は柊音の目の前で膝をつき
真正面から柊音を
そっと抱きしめる
温かくて...
懐かしい乙羽の匂い...
そんなふわりとした
優しさに包まれて
思わずボトルを手放す柊音
「...ゴメン..ね
ゴメン...ね...
.......シオ..ン...」
「...さわんな」
暗く冷たい瞳で
乙羽を降り払うも
離れようとしない乙羽
「.....
格好...
悪りぃな..オレ...
たかがDOLLに
本気んなって挙句
捨てられるなんて...
ハハ...
本当、笑い話にも
なりやしねぇ...」
「
「...」
「DOLLなんだから
テキトーにヤッて
捨てりゃイイもんを
オレはバカだよな...」
「...」
「でも...
バカでも何でも...
好きなもんは
好きなんだから
しょうがない
コレばかりは理屈で
どうこうできるもんじゃない
乙羽のいる空間を
知って...
オレは..もう...
以前(マエ)には
戻れない...
乙羽が出て行った
あの瞬間から俺は
呼吸だってままならない」
...シオン
乙羽は何も言わずに
柊音を抱きしめ
涙を流す...
「泣くなよ...
乙羽は正しい...
分かってるんだ...
俺の立場も...
乙羽の立場も...」
彼らには決して
下るコトの許されない
階段を上がっている
下りるコトを
許されないのなら
さらに上へと
上り詰めるしかない
その「頂き」すら見えない
過酷な階段を上り続けるために
彼らはどれだけ多くのモノを
失ってきたのだろう...
乙羽は力一杯柊音を
抱きしめる

