DOLL・・・ ~秘密倶楽部~


カチコチ..カチコチ...

時を刻む音だけが
静かに響く部屋の片隅で
膝を抱え小さくなる乙羽


 あたし...
 何やってんだろ...


自責の念に捕らわれたまま
時間だけが刻々と過ぎて行く


カチコチ..カチコチ....


 今、あたしが逃げ出したって
 飯岡さんはきっと...

 追わない..だろうな...


 漠然とだけど
 何だか...
 そんな気がした...


カチコチ..カチコチ.....



不意に立ち上がる乙羽

そしてフラフラと
部屋を出て行く


その様子を偶然
事務所の入り口から
見た飯岡は


「あいつ...」


そう言い煙草をくわえる


事務所のビルを飛び出した乙羽は
フラフラと街の中を歩く


 どうしよう...

 飛び出したはいいけど
 行くとこなんてないし...

 あたしには帰る場所さえ...



ずっと...

車の中から見ていただけの
景色の中を一人さまよい歩く乙羽


そして乙羽は
ある事に気が付く


 この曲...


ふと、足を止める乙羽


街はどこもかしこも
柊音たちで溢れていた


目に...

耳に...


柊音たちが入ってくる


外の世界は思った以上に
柊音たちで溢れていた



 柊音たちの現状を少しでも
 あたしに理解させる為
 飯岡は「街へ出ろ」と
 言ったのだろうか...

 今や国民的スターと言われる
 彼らの世界をあたしに...
 
 知らしめる為...




そして、ふと通りかかった
ミュージックショップの店先で
再び乙羽の足が止まる...

店先に設置された
巨大なスクリーンから流れる
柊音達のコンサート映像

何万人もの人が
埋め尽くすコンサート会場には
柊音たちの姿に一喜一憂する
ファンの娘たちの姿が...

ステージの上で
キラキラした汗を飛ばす柊音


頭の先からゆっくりジーンと
体の力が抜けていく気がした


 あたしが一緒にいた人は
 こんなにも...

 人を魅了することのできる
 素晴らしい人だった...



しばらくその場から
動けなくなる乙羽




夜になりフラフラと
事務所に帰って来た乙羽

部屋の前には飯岡が立っている


「何かいいもんあったか?」



「...」


何も言わない乙羽の手には
ミュージックショップの紙袋が握られていた



「そうか...」


そう言うと飯岡は
灰皿代わりにしていた
吸い殻の溢れた
コーヒーの空き缶を手に
去って行く


 いつからここに
 いたんだろう...


ドアの片隅には
入りきれずこぼれ落ちた
タバコの吸い殻が
2、3本残っている

乙羽はそれを拾い部屋に入る



それから3日

飯岡の配慮なのか
乙羽に指名が
入る事はなかった


その間、乙羽はずっと
ミュージックショップで買った
大量の柊音たちのDVDを
観ていた