地下駐車場まで一気に
階段を降り切った乙羽は
力なくその場にしゃがみ込む
「...ぅぅぅ」
苦しくて...
切なくて...
全身が引き裂かれる
想いだった
コツ、コツ、コツ...
クセのある冷たい靴音が
乙羽の元へと近付くと
フワッ...
飯岡が乙羽にそっと
上着をかける
温かい感触と共に
飯岡の香水の香りが広がる
「...行くぞ」
そう言いと飯岡は
乙羽を立たせる
ふらふらと立ち上がる乙羽を
車の助手席へ乗せ
自分も運転席へ乗り込む
「...荷物は...
...後で運ばせる...」
そう言い
エンジンをかける飯岡
「...」
満たされていた心が
一気に...
カラッポになった気がした
車の窓から
流れゆく景色をただただ
ぼんやりと
見つめる乙羽に飯岡は
「しばらく...
指名は入れないから
買い物にでも
行ってこい...」
そう言い
胸の内ポケットから乙羽の
預金通帳を取り出し
それを差し出す飯岡
それは、DOLLで得る
収入の全てを借金返済に
あてる為、乙羽が飯岡に
預けていた通帳だった
「返済は順調だ...
お前の単価は上々だし
この調子でいけば
すぐに終わる...
余計なコトは考えず
一日でも早く借金を
返すコトだけ考えてろ」
.....
余計なコト...か...
今のあたしにとって
柊音は...余計なコト...
ここに来た時よりも
遥かに大きな深い闇が
乙羽の心を支配する

