DOLL・・・ ~秘密倶楽部~


「好きな女...」


拳を握りしめ
唇を噛みしめる柊音


「何だ...?
 言ってみろ...」



「好きな女一人...

 守れない...
 .....くらいなら...」


 ダメ...
 柊音...


柊音の口から
言ってはいけない言葉が
出てしまいそうで
乙羽は柊音を見る


すると柊音は
まっすぐに乙羽を
見つめていた



「...くらいなら?
 ....何だ?

 その先を言うのか?


 言えばお前は終わりだ」


 シオン...


乙羽は祈る気持ちで
柊音に視線を合わせる



「お前は自ら望んで...

 この世界に入って
 きたんじゃないのか?」


「...」


「いつも言ってるが
 アイドルは期間限定だ...
 
 だからこそ今の
 お前らに価値がある
 
 旬なこの時期に余計な
 スキャンダルを出して
 ほしくないから事務所は
 DOLLを用意した
 
 DOLLはあくまでDOLLだ!!
 
 他の何者でもない...

 つまらんことで
 自分を見失うな...
 
 お前らの後釜なら
 この先、いくらでも
 控えているぞ...」


飯岡が放つ冷たい言葉が
重く圧し掛かる....


 8年...

 まだ幼い柊音が親元を離れ
 夢見て憧れて...
 自分で望んで入った世界...

 柊音が夢に向かって
 歩き始めた頃
 あたしは何してた...?

 兄に頼って甘えて守られて...

 そして今度は...
 柊音に守ってもらうの?


 本当...
 もう、いい加減...
 誰かのお荷物は...

 あたしもちゃんと
 自分の足で歩かなきゃ...

 柊音はあたしの全てを
 抱えてくれると
 言ってくれたけど
 
 あたしは...?

 あたしは柊音の全てを
 抱えきれるの...?


 飯岡さんに電話したあの日
 全てを断ち切って
 ここへ来たはずなのに...

 あたしに覚悟が足りないから
 柊音に迷惑が...


 どうあがいたって
 あたしは当分
 この棘(イバラ)の道から
 抜け出せそうにない...

 それならもう...
 いい加減
 あがくのは辞めよう...って
 決めたのに...

 柊音があたしにとって
 ぬるま湯だったように

 あたしも柊音にとって
 ぬるま湯のような存在に
 なっているのならあたしは
 ここにいちゃいけない...


「.....飯岡さん

 
 あたしを事務所へ
 戻して下さい...
 
 柊音からの指名を...
 解除してください...」


小さく震える声で
でも、力強い瞳で
飯岡に訴える乙羽