「別の世界……?」
この人、正気なのかな?頭の中を生きている人で、現実を見ていない人なんじゃないかな?

さちはそう思った。別世界…そんなことを真顔で、しかも平然と言う人など彼女の周りには誰一人としていなかったからだ。彼女は店員との距離を少し伸ばした。しかし、店員は、気にせず笑顔で続けた。

「恐らく信じがたいことでしょう。ですが…私には、現実なのです、としか言えません。それに……」
「……え?」


「……あなたがここに来たいと望んだのでしょう?」

さちは、驚いて、目を見開いた。

私が、望んだ?……ここに来ることを?
「じょ…、冗談じゃないわっ!なんで、私がここに来たいなんて思うのよ!私はこの店の存在なんて知らなかったのよ!それに……私は…人のペットなんて要らない!」

彼女は語気を荒げながら言い放った。しかし、店員は動じなかった。やはり、慣れているようだ。

「……本当にですか?本当にあなた様は望んでいないと?」「しつこっ…」
「彼氏と別れたのではございませんか?」


「……………え?」
店員の顔から一瞬笑顔が消えた。