「当店は、看板にも書いてあるように、人間、つまりヒトをペットとして、販売しております。そして…」
「ちょ、ちょっと!待って下さいっ!」
人を売買する。さちは、最初からそこに引っかかっていた。そんな事が社会上、許されるわけがない。だが、店員は彼女とは対照的に、落ち着いていた。まるで、何度も同じやりとりをしてきたようだ。

「…はい?」
「そ、そんなことしてもいいんですか?人を売ったり買ったりするなんて…」
「あぁ…大丈夫ですよ。あっちはこっちに干渉出来ませんし、恐らく存在すら知らないでしょう。」
「……え?」

突然「あっち」だの「こっち」だの言われて、さちは困惑してしまった。店員はそれに気づいたらしく、補足し始めた。
「あっち、というのは『あなたのいた世界』のことで、こっち、とはこの『店』のことですよ。つまり……この店は、あなたのいた世界とは別の世界、ということです。」