「……申し訳ございません。」
「え?」


店から出てきた芝樹は、さちの前で止まるなり、深々と頭を下げた。服装は前と同じだった。


「当店のペットがお客様に対して、あれほど迷惑をかけてしまうとは…」
「え、あ、いえ」


芝樹はどうやら、さちの事情を知っているらしかった。

この人何で知ってるんだろう?

その時、あの契約書のことが彼女の頭をよぎった。


「ペットを大切に扱うこと」


しまったわ…今頃タケシはどこにいるのかしら?
この状況って、契約違反なんじゃないかな?


さちはそれが気がかりだったので、芝樹におそるおそる尋ねた。


「あの…もしかして、私、責任取らなきゃいけないんですか?」


それを聞いた芝樹は、顔を素早く上げ、
「とんでもない!今回の事態はこちらの躾の問題でございます。ヒトを売るものとして、商品がどこに行っても大丈夫なように、最低限の躾は私が行わねばなりません。今回の彼の行動は、私の躾が至らなかったからでございます。お客様にはなんら悪い所はございません。」


と話し、芝樹はまた頭を下げた。

……そうなんだ…よかった…

さちは胸をなで下ろした。


「あの、お客様?」