「きれ~…」
小さくあゆ先輩が呟いたのが聞こえた。
30分後。
ぐちゃぐちゃだったメイン装花は生まれ変わった。
英にぃが用意してくれた花の大半を使用して新しく活け直した結果。
「…出来た。」
なんとか蘇ってくれた。
「華南さん!!!」
門下生が嬉しそうに近づいてくる。
周りにいたお客さん達も拍手をしだしちょっと歯がゆい。
「華南ちゃんすごいよ!!!」
鋏を置くとあゆ先輩が駆け寄ってきてくれた。
「華南ちゃんって実は凄かったんだね!!私…部長として恥ずかしいかも…。」
「そんなことないですよ。」
華道部部長、あゆ先輩。
「誰にでも出来ますよ。」
そのあゆ先輩に笑って手を振る。
「謙遜だよそれは、私には出来ないもん!!」
できると思うけど…とは敢えて言わず苦笑した。
「華南。」
ドキッ。
一瞬にしてくる緊張。
目を泳がせ相手の方を見れずにいる。
「華南、こっち向け。」
む…向けない…。
緊張で硬直する身体、背筋が凍る。
「華南。」
「はい!」
そのど低い声に反応し相手の方を見てしまった。
「…一回で返事しなさい。」
「…はい。」
何だって私ばっかりこんな目に…。
「…誰?」
あゆ先輩が耳元で呟く。
「…お父さん。」
実はそう。
今目の前にいる人は玖城先輩なんかじゃなく、
私の父、新庄 保[しんじょう たもつ]。
華道家元その人だ。

