夢見る島

「困ったな・・」

また独り言を言いながら、寒さに手を
こすり合わせた僕は、塔内に急に吹き
込んできた寒風に、さむっと身を震わせ、
この階は早く離れようと考えた。

さっきまであんなにいた猿たちも、
みんないなくなってしまった。寂しい。
冬の空気の匂いが、寂しさをさらに
増幅させる気がする。

これからどうしよう?


さっき、あかりの映像が出てきたのは、
4の階で、それは、高校一年生のとき
の4月、入学式の場面だった。

他の階で塔の外に出たら、また何か
あかりの映像が見れるだろうか?

冬や夏に外に出るのはかなり気が進ま
ないが、春や秋、たとえば、5月や
10月ならどうだろう?

そう考えた僕は、「10」のボタンを
押そうとして、右手を上げたが、ボタ
ンへと伸ばしていた指を途中で止めた。