「やいゃ、ばあちゃんも本当にばあさんになったじゃ」痛そうな腰をさすりながら、ばあちゃんがいった。
 「動くのもやっとだもの…」

 少しまるまったばあちゃんの背中を支えながら、僕は肩のあたりをさすってあげていた。

 なんて言葉をかけたらいいか、浮かんでこなかった。


 僕が幼い頃のばあちゃんは、体が大きくて働き者で、少し怖い存在だった。

 怖いというのはよく叱られたから、というのではなかった。

 普段から口数が少なかったのと、あまり笑った顔をみたことがなかったからだと思う。


 でも、いつだったか近所の公園でバスケットボールを二人でした、あの時のばあちゃんの声と笑顔はとても楽しそうだった。


 昔から体を動かすことが好きだったばあちゃんは、今でもテレビで観るスポーツ競技の話には、どんな種類であれ口数が多くなる。

 いまでは散歩をするのもままならないらしい。買物も市の支援補助で家に届けてもらっている。


 それでも、子供達の世話になるのは気が引けるんだ、と同居を拒んでいた。