−ねえ克也
私が傷ついた時、癒してくれてありがとう。
私が傷ついた時、傍にいてくれてありがとう。

でもできるなら、
「やめてくれ」って一言言ってほしかった…。



あの日は克也が早く帰れる日に克也と同じクラブのホストが何人か部屋にきて、皆でお酒を飲んでいた。

店で1番カッコイイと言われているのが『海斗』

顔はイマイチだが場を盛り上げるのが上手い『龍河』

お金にやたらこだわる『英紀』

3人とも高そうなアクセサリーをつけ、100円ショップのコップに高いお酒をついで飲んでいる。

3時間位経った頃

「やべー克也。俺…気持ちわりぃ…」

突然、龍河がそう言った。

「飲み過ぎなんだよ。水飲むか?」

「ああ…頼む」

克也が冷蔵庫をあけると中のミネラルウォーターは空だった。

「あっ!オレオレっ。さっき割っちゃいました〜」

酔っている海斗が上機嫌にそう言う。

「あっ。私コンビニで買ってくるよ」

私が立つと克也は呼び止めた。

「馬鹿。こんな夜遅くに1人で出掛けたらあぶねぇだろ?俺いってくるから、お前は龍河をソファーに寝かしてやって」

そう言って克也は部屋を出て行った。

「龍河さん?大丈夫ですか?」

龍河は反応しない。私は顔を近づける。

ガタンッッ!!

何が起こったのかわからなかった。
私は床に寝ていて上に龍河が乗っている。

「え…ちょっと、どうしたんですか?」

龍河がキスをしてきた。

「やだっ!やめて!」

思わず龍河の頬を叩くと私は逆に殴り返された。口に血の味がした。

手を海斗が、足を英紀が押さえ付ける。

私は涙を流して龍河をみた。手も足も動かす事ができない。

「克也のやつ生意気なんだよ。歳下のくせに指名ばっかとりやがって」

「奈々ちゃん大切みたいだからさ。克也には良い先輩でいたいしな」

海斗と龍河は顔色1つ変えない。

「英紀さ…助けて」

私は黙っている英紀に助けを求めた。

すると英紀は私の足に自分の吸っていた煙草を押し当てる。

「きゃぁぁ!」

英紀は冷たい目で私を睨みつけている。