「……でも陽歌、君には僕に黙って出かけた罰を与えるよ」

「ええっ? そんなっ、だって怒っていないって言ったじゃない」

「怒ってはいないよ。でも心配はしたからね」

「あ…。そ…そうね。ごめんなさい。でも…罰って?」

「僕の全てを受け入れて、茜の出来なかった分まで生きて僕を愛するんだ。そして、僕の愛を最後の一欠片(ひとかけら)まで、全部受け取って欲しい。君の一生をかけてね」


陽歌の中にかつて晃が茜に告げた言葉が蘇る。

あの時、茜は応える事が出来なかった…だけど今は…。

陽歌の中に胸に迫るような熱い気持ちが溢れ出した。

その先に晃の告げる言葉はもう分かっている。

あの時、受け入れたくてもどうしても出来なかったこの場所から、今度こそ手を取り一緒に歩いていけるのだ。

晃が真っ直ぐに陽歌を見詰めて言った。

「拒否する事は許さない」

「うん…」

「抗うことも許さない」

「うん…」

「君に選択権は無いんだよ」

「うん…わかっているわ」

「君に許されるのは、僕を受け入れる事と愛する事だけだ」

「うん全部受け入れるよ。だから…今度こそ三人で幸せになろうね」

「愛しているよ…陽歌」

「愛してる。…晃…」

二人の影が重なり、甘い囁きが時を止める。

瞳を閉じた瞼の裏側に…

あの日散華した桜が舞い上がった