婆ちゃんの恋物語

誠さんの反戦思想が、新年早々炸裂してた。
巧さんのお母さんとお父さんは、息子を見るみたいな眼差しで、誠さんを見てはったん。

「巧も、誠さんみたいに、早よ立派な日本人になって貰わな、なあ、」

巧君のお父さんは、お母さんの言うた言葉にムッとしたのか、外へ出て行った。

「また、そんな事言うて、僕の前で、そんな事言わんで良いんやから、
他の軍の人間とちゃうんやで。生まれた町、生まれた国、人間誰でも、その場所が大切や、なんて言われても、其処が故郷なんやからなあ。」

巧君の家族が、済州島と言う、朝鮮から強制労働者として連れて来られたんやと元旦の雑煮を食べながら、誠さんに聞かされたん。


「なんや、そんな目で、見んといて。」

「そんな目って?。」

「日本人ちゃうから、馬鹿にしてるんやろ。」

元旦の嵐や、逸れとなく、わかってた事やけど、誠さんが、うちらの前で、何もかんも、開けっぴろげに話したもんやから、巧君は、話の途中から、お父さんみたいに、逃げ出してたん。
自分の部屋に帰る前に、靖ちゃんと、事務所に行きかけてたら、巧君が、フラッと出て来て、噛み付いて来はってん。

「そんなん、何も思てないよ。」

うちが、そう言うたら、巧君、下向いてもうて、

「僕、日本人として、兵隊に行くわ。そしたら、日本人になれるやろ。」

「お国の為に戦うんは、偉いと思うけど、兵隊に行かんでもええやん。此処に居るんやから、日本人やん。」

何を言うてるんや、なんや、旨いこと言葉が出てこうへんかってん。
横に、立ってた。
靖ちゃんが、ポロポロ泣きだしてん。

「どないしたん。」

「ごめん、泣かんといて。」

苛々してた巧君の顔が、困惑に変わってたわ。