婆ちゃんの恋物語

1945年(昭和20年)元旦正月と言う気分は、殆ど無いまま、今日だけは、お休みやと言うから、ゆっくり眠っててん。

「おめでとうさん、起きてる。」

寝ぼけた頭に、巧君の声が響いてん。
靖ちゃん、その声聞いて慌てて身支度し始めて、声を出すのも、忘れてたみたいやったわ。

うちは、頭の髪の毛が跳ねてるんも、知らんまま。
「おめでとうございます。旧年中は、色々お世話なりました。今年も宜しくお頼み申します。」

開けた戸の前で深々と頭を下げて上げたん。

「おめでとう。麻ちゃん、髪の毛跳ねまくりやなあ。」

その頭に大きな手のひらが乗っかって、撫でるでは無く、ゴシゴシさするように、手のひらと指が動いてた。ゾクッとして耳が赤くなったんちゃうかなあ。耳朶が熱く感じてたから。

「おめでとうございます。旧年中は、お世話になりました。今年も宜しくお願い申します。」

うちの後ろに隠れて、恥ずかしそうにしてる。靖ちゃんが、挨拶してるん、巧君、子供がお母さんを見るみたいに、真っ直ぐ見てはったわ。

「雑煮、皆で食べるから、うち来て。」

巧君のお母さんは、隣に住みだしてから、なにくれとなく、世話をしてくれて、うちらにとったら、お母さん代わり、寂しさもお蔭で少しは、ほぐれてた。


「雑煮言うても、餅は、粟のトック(韓国の餅)と大根だけしか入ってないんやけど。今年は、これでお祝いや。」

器に入れながら、申し訳なさそうに、おばちゃんが言うん。