その日、千代ちゃんは、親戚の人が、来るとかで、何時もより、早く帰ってしまった。一緒に帰ろうかとも思ったけど、
読みかけの本が、気になって、切りの良いところまで、読んで帰るつもりで、本を読んでると、
視界にチラっと、男子学生の姿が、見え隠れして。
何やら、ドキドキして、逃げ出したくなったんよ、
それで、席を立ち、本を棚に返して、帰ろうと足早に歩いて、図書館を出て、人通り少ない公会堂の方の道に向かっていたら、誰かが、私に声をかけてる声が、耳に聞こえて来たんやわ。
「すんませーん。」
振り返ると、昭一郎さんと昭雄さんやった。
千代ちゃん、帰らんとおってくれたら良かったのに、近寄ってくる二人を見ながら、思ってた。
「急に、呼び止めて、すんません。」
背の高い、たぶん、昭一郎さんやろなあ。
「あの、自分は、徳田昭一郎、海軍士官学校に、この春、入隊します。」
「はあ。」
私気のない返事をしてしまってね。
「自分は、今度、師範学校にあがる、弟の昭雄です。」
私は、地主さんの息子さん達だと知ってたんよ。だから、自己紹介されながら、なんか、緊張してね。青くなってたかもしれないわ。
なんせ、地主さんの息子さんやもん。
読みかけの本が、気になって、切りの良いところまで、読んで帰るつもりで、本を読んでると、
視界にチラっと、男子学生の姿が、見え隠れして。
何やら、ドキドキして、逃げ出したくなったんよ、
それで、席を立ち、本を棚に返して、帰ろうと足早に歩いて、図書館を出て、人通り少ない公会堂の方の道に向かっていたら、誰かが、私に声をかけてる声が、耳に聞こえて来たんやわ。
「すんませーん。」
振り返ると、昭一郎さんと昭雄さんやった。
千代ちゃん、帰らんとおってくれたら良かったのに、近寄ってくる二人を見ながら、思ってた。
「急に、呼び止めて、すんません。」
背の高い、たぶん、昭一郎さんやろなあ。
「あの、自分は、徳田昭一郎、海軍士官学校に、この春、入隊します。」
「はあ。」
私気のない返事をしてしまってね。
「自分は、今度、師範学校にあがる、弟の昭雄です。」
私は、地主さんの息子さん達だと知ってたんよ。だから、自己紹介されながら、なんか、緊張してね。青くなってたかもしれないわ。
なんせ、地主さんの息子さんやもん。

