婆ちゃんの恋物語

お婆ちゃんは、踏ん張るようにして言うたけど、
揺れよりも、食欲よりもうちらは、睡魔に襲われて、眠ってしもてた。



「起きなあかんよ。」

起こされて始めて眠ってたんやと靖ちゃんと顔を見合わせたん。

少し焦げた干し芋は、冷たくなってたわ。
懐中時計を見たら、2時になってたん。

「えらい、寝てもてたんやなあ。」

「家に帰って、ホッとしたんやわ。」

うちらが、ぼそぼそ話してたら、大きな袋包みをお婆ちゃんが、持って来て、パンパンの袋の中に、干し芋をまだ、詰め込んでたわ。

「何、それ。」

「あんたらの荷物やで、ほれ、時間があらへん、あんたら、着替えを風呂敷にでも詰めてきなさい。」

「なんで。」

「麻子も、靖ちゃんも、靖ちゃんのお母さんの疎開先に、ちっと間、行けるよに、所長さん言う人に、頼んでみるさかい、用意してき。」

無理やと、わかってたけど、口答えするのもなんやから、言われるまま、絣の風呂敷に、着替え詰め込んで、うちら、お婆ちゃんと家を出たんは、2時半前やった。

まだ時間あるのにと思いながら、お婆ちゃんの後を歩いてたん


「おーい、えらい早いな。」

それは、こっちの台詞やと、誠さんの声を聞いて思ったわ。
お婆ちゃんは、若い誠さんが、所長やと思わんと、辺りを探してた。