婆ちゃんの恋物語

指から、止めどなく血が流れて、床に血が落ちそうなんを、靖ちゃんが、ハンカチを裂いて、くるくると、手際よく巻いてくれたん。

「これで、血は、止まるわ。麻ちゃん、気い付けや。」

「ハンカチ、裂いてもうたん、ごめんな、帰ったら、うちの返すさかい。」

靖ちゃんは、なんか、機嫌悪そうな感じやから、うち、なんか、痛いの忘れてしもて、靖ちゃんの顔見てたん。

「ぼちぼち、始めてや。僕は、補強の材木取ってくるから、揺れたら、直ぐ外に出ること、書類は、此に一様全部入れといってな、床の硝子は、掃いて取ってて、怪我しいひんように作業してください。」

少尉は、そう言うたら、出ていってもたんよ。


「靖ちゃん、なんか怒ってるん。」

「いいや、別に。」

「でも、なんか顔が、怒ってるみたいやで。」

「なんか、麻ちゃん嬉しそうやから、家の事気にならへんのかなあって思てたら、腹立って顔に出たんかなあ。」

うち、そう言われて初めて、お母さんや、お爺ちゃんとお婆ちゃんの顔が、浮かんでん。

恐いのと、嬉しいのとで、なんか、ほんま、頭から飛んでもてた、それを指摘されて、ほんま、罰悪うて、言葉も出えへん。こんな時に、ボーっとしてもてたんが、恥ずかしがったけど、それ程、うち、少尉が好きなんやって、初めて、自分の気持ちを認識したん。