婆ちゃんの恋物語

お母さんが、ボソッと言いはった。
年の瀬が始まっても、重苦しい空気が酷くなる一方やったん。
もう、うんざりやって、国民の半数は、口に出さへんけど、もう、ほんま疲れてた思うわ。



1944年(昭和十九年)
12月7日。お昼を麻ちゃんとお芋のお握りを食べて、帳簿をつけるように、大谷さんに言われたから、事務所で、二人珍しく一緒に、帳簿つけをしてたん。

「少尉は、今日は居はるなあ。朝見かけてん、
挨拶したら、オッて、手を挙げて、頑張ってるかって、靖ちゃん、傍にいてへんねんもん。」

「うちは、月締のを、これする前にしてたんやもん。出てたら、また、大谷さんが、怒鳴るやん。」

「朝から、事務所やったやなあ。うちは、材木の数、数えさせられててん。最近、数が減るんやて、だから。毎日数えなあかんらしいわ。」

「材木泥棒?。」

「軍の集積所やで、泥棒なんか、あるんかなあ。」

ゴーという低い音が響いて

「何の音?警報なってないのに。」

麻ちゃんが、喋り終えると同時に、ドスンと体が突き上げられた、次の瞬間グラグラ揺れ始め、

「キャー。何これー。」
立ってられなくて、机の下に二人で、抱き合うようにして身を小さくてん。
硝子が割れる音、角材が転がる音、平衡感覚なくなったみたいに、座り込んで、何が起きてるのか解らずに、
二人、震えて。涙がボロボロ流れて来てたん。


「大丈夫かあー。おーい、」