婆ちゃんの恋物語

麻ちゃんは、空襲警報聞いて、軒下の壕に入っても、頭の中は、空襲より、少尉の事やったんよ。
空襲も、まだ、偵察機が多かった時期で、爆撃の被害は、みじかには、まだ無くて、年の瀬を迎えようとしてた頃やったなあ。
小豆貰ってから、麻ちゃんは、少尉教の信者になったみたいや、今で言うたら、ファン言うんかいなあ。



「なあ、少尉さん、今日も、見かけへんなあ。」

「そうやなあ。」

事務所で、台帳整理しながら、麻ちゃんが不満そうに話して来てん。

此処、二、三日、少尉の姿を見てないからて、麻ちゃんは、あたふたして、探してたみたいやわ。
うちは、何の興味もないから、気にもせえへんかったけど、休み時間、否応なく麻ちゃんのお供で、捜索に出る毎日やったん。

二人で、また、捜索を始めた時、角材を肩にのせて、巧と呼ばれてるあの少年が、歩いてきてん。
「こんにちわ。」

「こんにちわ。」