婆ちゃんの恋物語

もう直ぐ、この国、負けてしまうやろなあ。」

少尉さんは、うちらの前に、ドカンと座って、熱弁してはる。

少尉のくせに、反戦主義で反軍思想やと、佐伯さんが、言うてたのを思い出してん。
後、捕虜の扱いの事で、城中さんが、苦言したらしいけど、同じ人間だと、恫喝されたと小さくなってはった事もあったわ。
うちが、思い巡らしてる横で、麻ちゃんは、なんや、ボーっと聞いてる耳が、紅生姜の色しててん。

「少尉殿は、外地に行かなくて良いのですか?」
「行きたない、死にたない。行け言われたら、
逃げなあかんなあ。アハハハ。」

精悍な顔の奥に、なんか、人を包み込むような、優しさと穏やかさを感じててん。

殺伐とした兵士の中では、異質な人間、非国民、左翼と陰口を叩かれているのは、どおりやと思った、でも、その話、軍国少女のうちらの固い頭にも、なんや、違和感のない教会の賛美歌に聞こえてたん。




空襲が、チラチラしだした。年の瀬になってたなあ。

「これ、旨いから持って来た。食べてな。」

「巧、これ、嫌いか?」
「いや、オモニが、渡して来いって。」