何時もの二人の話を聞きたくて、少し間を置いてからかと思って、ジュースを一気飲みして、うつうつしてたら、縁側の声聞入り始めたん。
1944年(昭和19年)うちと麻ちゃんは、扇町高女を卒業して、強制的に、中部軍経理部の事務に採用され、神崎集積場で、高射砲陣地に供給する木材の集計や、発注の補佐をする事になってん。

軍国少女十六歳、
うちの親は、マッチ工場を営んでたんやけど
戦争が、酷なってきたんと、母親の病気で、弟を連れてこの夏に、名塩のお爺ちゃんの所へ疎開したん。うちは、軍に入隊したんと同じで、残らなあかんから、麻ちゃんの離れに仮住まいさせて貰うようになってん。

「やっちゃん、ご飯やで、」

麻ちゃんのお母さんの声が、響いてる。

「起きとうよ。やーっ、また、お芋さん。たまには、白いご飯食べたいわ。」

「あほかいな、こんなご時世に、朝から、白米食べてる家ないわ。」

麻ちゃんと、麻ちゃんのお母さんの何時もの朝の会話が響いてた

年明けから、空襲が増えて、明石や西成、東成、工場の密集地を爆撃されて、疎開する人も増えて来てたんやけど、
麻ちゃんとこは、親戚が疎開区域に住んではったから、其処へ疎開は、許可されへんし、麻ちゃんも、軍の仕事で神崎に行くようになったから、

その上うちも、引き受けてもうて、そやから、麻ちゃんの家の軒下に、防空壕と言うには、小さい壕をお祖父ちゃんが掘ってん、
サイレンが鳴ったら、身を寄せて空襲が終わるん待ってたわ、町中で、うちら、慎ましく生活してたんやで。


二人で大阪駅から、国鉄で、神崎駅まで通勤して半年以上過ぎて。

「出征の兵隊さん、増えたなあ〜。」

「ほんま、列車の中が、兵隊さんの専用列車みたいやなあ。」

3、4ヶ月で、乗客も様変わりして来てた、

世の中が、荒れ果てる中、
それでも、楽しみを見つけれるんが、若さやったんかなあ。

気持ちは、二人共、軍国少女やったけど、あの人の前では、乙女に戻ってたんやろなあ。


「なあ、山田少尉、また、捕虜に、芋や、おもゆを炊いて食べさせたんやてなあ。」

「俺らも捕虜になりたいわ。腹減ったあー。」

男性事務員が、朝から、噂話をしてた。