婆ちゃんの恋物語

それを見たら、火の中で、お不動さんに会うてんやなあ言いますねん

話が、ちょっとそれましたなあ。

何時間、黙って人の焼ける火を見てたんやろ。
千代ちゃんは、卒倒しておかあさんと、千代ちゃんのお母さん載せた雨戸運んでくれたおばちゃん支えられて校庭から、出て行ったんやけど、

私、茶筒を渡されたもんやから、その場から、離れられへんやん。

いつのまにか、隣に、昭雄さんが、黙って、立ってくれてはった。
火傷しそいなほど、熱い火の勢いが、
地獄って、こんな場所あるんやろなあ。思ててん。

「怪我してへんみたいで良かった。」

「ありがとう。」

ボソッと昭雄さんが、喋りはってん、
お礼しか言われへんかったんわ。
目の前の真っ赤な火の勢いが、人の心を無にしてしもたんかなあ。
嬉しい気持ちも、なんやホッとした、あの気持ち、
荼毘の火に焼かれてもたんやろか。
炭になった、廃材が、ゴロゴロ転がって来て。
遺体が焼け過ぎないよう消火が始まって、
消えた所から、骨拾いが始まってん。