婆ちゃんの恋物語

勝手に学徒の持ち場を替えるのは、彼女自身、罰せられる可能性が、あったから、
なんか、申し訳ないような、
お母さんが、歩いて行く
その女性の後ろ姿に、手を合わせてた
有難うなんて、言われへんもんね。
どこで、誰が聞いてるかわかれへんから。


「雨戸の板、下に敷いてますんやな。」

「そうみたや。」

「運びますで、キミ、しっかり持ちなはれ。」

「はい。」

返事はしたけど、重たいんよ。千代ちゃんのお母さんが、
肥えてるわけじゃないんやで、持ち方が、わからんのやろか、上手く水平にならへんねん。
千代ちゃんは、呆然として、雨戸板から垂れた。お母さんの着物を握りしめてたんよ。
持ち上げるにも、持ち上げれない状態で。

「校庭に、遺体を集めて下さい。荼毘の廃材つみあがりました。」