婆ちゃんの恋物語

諦めたくない気持ちが、伝わって来て、何も言われへん。
変わりに、涙が、出て来て、堪えきれへんようになってしもた。
それを見た千代ちゃんは。卒倒してしまった。
近所のおばちゃんが、たまたま、通りかかったんを幸いに、声をかけてくれはった。

「あっ、キミちゃんやないの。どないしたん?。」
「すんません、友達が、倒れてしもて、家に帰れないんです。
塩見さん、帰りはるんやったら、家に声かけてくれませんか?。」

「学徒動員で、来てはるんやったね。わかったわ。お家に寄って、お母さんに伝えとくわ。なんか他に、用事ないん?。その子の親御さんにも、伝えて来てあげよか?。」
「親御さんは、此処にいはります。」
私の泣き腫らした顔の意味が、やっと理解してもらえたみたいやった。

「それは、お気の毒に、なんか、用があったら、言うてや、明日も、私来るから、」

腕のシーツをさいた、包帯を見せて、

「割れた硝子が、腕に刺さって、ほったらかしにしてたら、膿んで、蛆が湧いてもてな、
毎日来てるんよ。」

「すいません、なんか、小さな壷か、いらなくなった茶筒でも良いんで、
朝一番に、持って来て貰えたら。」

「なんか、持ってくるから、待っといて。」


教室の片隅、
千代ちゃんが、気づいたのは、夜が更けて、周りは、寝静まっているけど